政府全体で行政手続きコスト(行政手続きに要する事業者の作業時間)削減の観点から、2020年4月から特定の法人について、電子申請の義務化が開始されました。これにより、対象となる会社は電子申請の体制を早急に整備することが求められました。

大部分の中小企業においては、今回の義務化の対象外となりますが、政府全体として電子申請を推進している流れはいずれ中小企業にも波及していく事が充分に予想されます。そのため、早い段階から準備を進めておくに越したことはありません。

そこで、今回は電子申請を社内で導入するに際しての手順を説明していきます。

大まかな流れは以下の通りとなります。

①から順番に説明していきます。

①認証方法の登録

まず一番始めに取り組むのが認証方法の登録となります。

認証方法の登録には商業登記に基づく電子認証制度の電子証明書(以下、電子証明書という)とgBizIDの取得があります。

それぞれのメリットデメリットは以下となります。

<電子証明書>

メリット:gBizIDと比較して対応手続の範囲が広い

デメリット:費用が発生する

<gBizID>

メリット:費用がかからない。電子証明書の取得と比較して取得手続が簡単

デメリット:電子証明書と比較して対応手続の範囲が限定されている

次からそれぞれの取得方法を説明していきます。

➊電子証明書の取得

電子証明書の取得に際して、オンラインで申請する方法と申請書を作成し郵送で申請を行う方法があります。

ここでは、オンラインで申請する方法を説明します。

オンライン申請で必要なものは以下のものとなります。

  • 申請用総合ソフト
  • 商業登記電子認証ソフト
  • 手数料
  • 代表個人のマイナンバーカード(通知カード不可)

電子証明書の有効期限によって手数料はことなります。手数料は下記となります。

出所:法務省 商業登記電子証明書の取得方法について

また、前提としてこちらの電子署名書が取得できるのが、会社・法人の代表者となります。個人事業主は対象とならないので注意が必要です。

では、次から具体的に説明していきます。

Ⅰ.商業登記電子認証ソフトをインストールする

本ソフトは、電子証明書をオンラインで取得するための申請用紙を作成するのに使います。下記ソフトインストールをクリックし、図の赤丸部分をクリックしソフトをインストールします。

ソフトインストール

出所:法務省 

Ⅱ.申請書を作成する

インストールが終わったら、ソフトを立ち上げ、「鍵ペアファイル及び証明書発行申請ファイルの作成」をクリックし、会社情報を入力します。

入力が完了したら「鍵ペアファイル及び証明書発行申請ファイル作成実行」を押下し作成を完了させます。

そうすると、以下の3つのファイルが作成されれば本工程は完了です。

注意点として、作成されたファイルは破損する恐れがあるので開かないようにしなければいけません。

  • 鍵ペアファイル
  • 登記所に提出するファイル「SHINSEI」
  • 登記所に提出する申請書(PDF)

Ⅲ法務省の申請用総合ソフトのインストール

下記、ソフトインストールをクリックし、図の赤丸部分をクリックしソフトをインストールします。

ソフトインストール

出所:法務省

Ⅳ申請用総合ソフトでオンライン申請を行う

申請用総合ソフトを立ち上げ、申請者情報を入力後、Ⅱで作成したⅱ「SHINSEI」を添付し、代表個人のマイナンバーカードで電子署名を行い申請します。

Ⅴ手数料の納付

Ⅳで申請した申請書が登記所に到着後、納付情報が発行されるので、インターネットバンキングやペイジーに対応したATMで納付を行います。

Ⅵ電子証明書のダウンロード

手続きが完了したら、申請用総合ソフトの「お知らせ」で電子証明書のシリアル番号が確認できるようになります。

電子証明書のシリアル番号が確認できるようになったら、「商業登記電子認証ソフト」を立ち上げ「電子証明書の取得」を押下することで電子証明書のダウンロードが完了します。

➋gBizIDの取得

gBizIDの取得には以下のものが必要となります。

・法人の印鑑証明書

・印鑑証明に登録した印鑑

また、ID作成完了まで2~3週間程度かかります。

ⅠgBizプライム作成ページへアクセス

下記URLからGbizIDホームページへ移動し、「gBizIDを作成」を押下。

GbizIDホームページ

gBizIDにはプライムとエントリーがありますが、プライムを選択します。

出所:gBizID HP

Ⅱ必要事項を入力

登録するメールアドレスを入力後、指示に従い、必要事項を入力します。

Ⅲ申請書の郵送

必要事項の入力が完了したら、指示に従い書類を印刷し、印鑑登録をしている印鑑を書類右上に捺印後、印鑑証明書と併せて郵送します。

2~3週間後にメールで連絡が来ますので、連絡がきたらgBizIDの取得は完了です。

②電子システム導入

電子システム については、無料で使えるものから、毎月ランニングとして費用かかかるもの処理の対象となる従業員の人数あたりの費用が発生するものなど様々なものがありますが、ここでは、政府が提供している無料で使うことができるe-Govをご紹介します。

Ⅰe-Govのインストール

下記URLにアクセスし、図の赤丸部分をクリックしソフトをインストールします。

e-Gov

出所:gBizID HP

Ⅱe-Govへのログイン

認証方法の登録でgBizIDで登録した場合には、gBizID でそのままログインし使用を開始ができます。電子証明書の認証方法を選択した場合には、下記URLからe-Govアカウントの作成が必要となります。

アカウント作成

画面の指示に従い、アカウントの作成が完了すると、使用できるようになります。

③申請手続

電子申請にあたっては、e-Govの画面上からそのまま入力し申請を行う直接入力方法と、CSVで申請データを作成し、申請データにCSVを添付するCSVファイル添付方式があります。

CSVを作成しなくてもe-Govの画面上から入力を行う直接入力方式でも申請自体は可能ですが、実務処理上、画面の構成上人数が多い場合など入力処理が煩雑になってしまうケースが圧倒的に多いです。

そのため、複数人の処理を同時に行う場合、例えば当月の入社処理を複数人同時に行う場合などはCSVファイル添付方式で処理を行うことが現実出的です。

CSVファイルの作成は市販のソフトでも作成できますが、政府が無料で提供している「届書作成プログラム」でも作成ができます。

CSVファイル添付方式で申請を行う場合には、下記URLからソフトをインストールし使って見てください。

届書作成プログラム

以上に、社会保険、雇用保険関係の電子申請導入手順について説明しました。

今回は政府が無料で提供しているe-Govや届書作成プログラムなどのソフトで申請する方法を紹介しました。昨今、このような社会保険、雇用保険などの手続システムをはじめとしたHRテックと言われる人事領域のシステムは活況を呈しており、2023年現在1,038ものサービスもあると言われており、組織の課題に対して何かしらの解決策としてシステムの導入が一定の効果を与えることは出来るでしょう。

一方で、システムを活用する企業側からしてみると、どのようなシステムが自社の業務にあうのか、どのような基準で選択すればいいのかといった、解決策自体の選定という別の課題が発生することが考えられます。

株式会社スタディテックではDXコンサルティングと基軸とした専門家が、人事領域のみならず、経営全体を俯瞰し、経営戦略からシステム導入まで一貫した、貴社オリジナルの最適な解決策をご提案します。是非お気軽にご相談ください。